以前のこと、ある企業から「幹部社員向けにエグゼクティブプレゼンス研修を実施したい」と相談を受けたときのことです。打ち合わせの終盤、担当者の方がこう切り出しました。
「どうか“ただのおじさんたち”を“エグゼクティブ”にしてやってください」冗談めかした言い方でしたが、その表情には切実さがにじんでいました。
「ただのおじさん」(失礼)と「エグゼクティブ」の違いは何か、どうして、その時に担当の方が切実な思いを抱いていたか、そこには企業の命運を分けるような「エグゼクティブプレゼンスの重要性があったのです。
日本企業が買収された…その時起こったこと
その企業(以下、A社)は老舗として長年の実績を誇っていましたが、数年前、業績の悪化から外資系のB社に買収されました。買収後もA社は「B社の日本支社」と看板を変え、幹部陣はそのままポジションに留まりました。しかしその時、B社の本社(米国)からはこんな指示が出されていたのです。
「A社の幹部陣は当社のエグゼクティブとしてのプレゼンスが著しく不足している。企業ブランドを守るうえでこのままでは支障がある。次回のパフォーマンスレビューまでに改善せよ」
この通知を受け、B社から日本に派遣されたHRマネージャー(仮にC氏)は、A社役員の印象に愕然としたと言います。「国内企業としては普通かもしれないが、グローバル基準で見れば、プレゼンスが弱すぎる。振る舞いも装いも、“ただのおじさん”と揶揄されても仕方ない(この時は、幹部は男性しかいなかったのです)」。
外資系では、幹部にふさわしい雰囲気や佇まい、つまり「エグゼクティブプレゼンス」が求められるのは当然のこと。実はこの時すでに一部のA社幹部はすでにB社経営陣の面接を受けており、「あなたにはエグゼクティブプレゼンスが不足している」と直接的に厳しい指摘をされていたのです。それもあって、「エグゼクティブプレゼンスとは、どこで何を学べばいいのか」と悩む声がA社幹部からも上がっていたようでした。
C氏は、こうした状況で手をこまねいていては自身のパフォーマンス評価にも関わると察し、早急に研修を手配したのです。
「外見や雰囲気」こそ企業ブランドを担う
こう聞いても、何となくピンと来ていない方もいらっしゃるかもしれません。まだまだ日本国内では企業の幹部だからといって「エグゼクティブプレゼンス」が問われることはあまりありません。
しかし、企業の印象は実際、人を通じて判断されることが多いことは誰もがわかっていることでしょう。そのため、一般社員のイメージやアピアランスについて企業研修に含める企業はそこそこあります。しかし、問題はまず幹部なのです。幹部は写真がホームページやIR資料に掲載されて企業ブランドイメージそのものになります。また商談などでは、重要な場面でのアンカーともなります。また、その企業内においては規範であり、社内の文化や社員の将来を体現するモデルです。そのプレゼンスは社内外において重要な役割を果たします。
幹部が持つ第一印象、その立ち居振る舞い、声や話し方、姿勢、服装、コミュニケーションスキルなどは、企業ブランドを構成するものなのです。
「エグゼクティブ」と「そうでない人」の違い
では、冒頭に出てきた、ただの人とエグゼクティブの違いはどこにあるのでしょうか。ここでは「ただの管理職」と「エグゼクティブ」の違い、と言った方がわかりやすいかもしれません。
筆者自身の経験から言うと、自信と洗練を感じさせる落ち着き、どこか品格のある佇まいがあるかどうか、周囲と比較して重要な人物とわかる雰囲気があるかがポイントだと思います。国内外の超一流の人物が行き交う5つ星ホテル、外資系エグゼクティブビジネスクラブに勤務している時代に感じたのは、特に海外のエグゼクティブは自然そうに見えて意図的にそうした雰囲気を醸し出していることでした。そうした人は、ただ座っているだけでも周囲に存在感を与えます。
これは決して“生まれ持った資質”ではありません。自然そうに見えて意図的にそうした雰囲気を醸し出している人は、自身のポジションや役割について仕事の成果だけでなく「周囲にどのような印象を与えるべきか」ということにも責任を感じる視点があります。それが差を生むのです。
そのような視点がある人は、キャリアが進むにつれて能動的にその責任に取り組み、第一印象をはじめとして立ち居振る舞い、声や話し方、姿勢、服装、コミュニケーションスキルなどを向上させようと主体的に努力します。
エグゼクティブプレゼンスとは、生まれ持った“オーラ”ではなく、そのような「意識」を出発点として習得可能となるスキルです。
エグゼクティブプレゼンスが企業の命運を分ける可能性
多くの人が「仕事の中身や成果」を気にしますが「自分の印象の影響」はどこか軽く扱われがちです。しかし、“見せ方”の積み重ねが、信頼を築く要素になることは少なくありません。
会議の座り方、会話中の表情、食事中のマナーなどが単独で評価されることはありませんが、実は、姿勢を正す、声の出し方を変える、装いに気を使うだけで周囲からの評価のされ方や期待、人との関係性が好転することはよくあることです。その理由はそのようなちょっとした印象の影響は主に人の潜在意識に影響し、人が知覚しないところで人の感情や思考に影響するものだからです。
西暦2,000年を超えてから心理学が脳機能の研究とも結びつくようになり、人の「中身」だけでなく「見せ方」「感じさせ方」の重要性が知られ始めました。企業にとっても、人材の仕事のパフォーマンスと同様、責任感あるプレゼンスの示し方は評価する対象として重視すべきです。ましてや、幹部のエグゼクティブのプレゼンスは、企業文化やブランドの象徴であり、経営層にとっては極めて重要な資産です。
先に、日本国内ではまだまだ「エグゼクティブプレゼンス」が直裁的に問われることはありません。しかし、それは国内限定での感覚に過ぎず、すでに米国などをはじめとした諸外国では、場合によってはその習得の緊急性を帯びることもある課題なのです。日本と諸外国とのギャップに無頓着でいれば、取引、海外進出などに支障が出る可能性もあります。企業の命運を分けるかもしれないと言っても過言ではありません。
もし今、「自分はそこまで意識していなかった」と感じる方がいれば、今からでも間に合います。「見せ方の責任」を意識し、「エグゼクティブプレゼンス」の理解を進めてください。できれば、企業で研修を受けていただくか、個人でのトレーニングを始めていただきたいですが、第一印象をはじめとして立ち居振る舞い、声や話し方、姿勢、服装、コミュニケーションスキルなどについて独力で向上をはかることでも大丈夫です。それはあなたのキャリアを大きく前進させる力になるはずです。
弊社では「エグゼクティブプレゼンス」を短期で理解し向上させていくノウハウをお伝えしています。冒頭でお話しした研修では、「意識的に見せ方や人への印象の与え方を学べる貴重な機会だった」との声が上がり、「今まで受けた幹部研修の中で最も興味深くためになる内容だった」との声もいただきました。B社の本社(米国)経営層からの評価が上がったこともありますが、自身が持つ可能性を感じ取っていただき、大いに士気が上がったことも申し添えます。
エグゼクティブプレゼンスの詳細はこちらから
https://www.attainments.co.jp/contact.html
エグゼクティブプレゼンストレーニングや研修はこちらをご覧ください。
・個人での受講をお考えの方
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